コロナ禍の一年:製造業回復の過程には二通りの速度
2021.03.22
2020年第4四半期までを網羅する最新の統計データによると、COVID-19の影響により上半期に大きく業績を落とした世界の製造業の業績が徐々に回復してきていることが明らかとなった。しかし、回復の速度は均一ではなく、いくつかの国、例えば中国のように生産量が既にCOVID-19パンデミック前のレベルを超えている国がある一方で、非常に緩やかなペースで回復軌道を保っている国々が多く存在している。
2021年3月10日(ウィーン)- 世界の製造業に関する最新の公式データを網羅するUNIDO世界製造業報告書では、本セクターにおける2020年第4四半期の生産量が前年同期比で2.4%増加したことを示している。プラス方向で推移する中でのこの成長率は、昨年上半期に見まわれた極めて深刻な落ち込みの後、世界各国の製造部門における生産量が昨年第4四半期においてCOVID-19パンデミック前の水準に回復したことを明確に示すものと言える。
他方、本報告書ではまた、各国の経済回復に向けた動きには2通りあることを示している。中国は昨年第4四半期において前年比9.4%増の成長を遂げるなど急速に回復しており、このことは中国が既にCOVID-19パンデミック前の成長軌道に戻ったことを表している。一方、他の新興国や途上国においてもパンデミック前の生産レベルには戻っているものの、その動きは非常にゆっくりとしたものとなっている。一方、先進国経済は依然マイナス局面に置かれている。この状況はおそらく、昨年後半、より厳しい封じ込め措置を導入せざるを得ない程に感染が拡大したコロナウィルスの第2波(第3波)の影響によるものと推測される。昨年末以降、多くの国がワクチン接種キャンペーンを開始しているが、それらワクチンが一体どれくらいの速さで、現在強いられている各種行動制限の緩和や経済活動の再開をもたらすのかについては依然明らかになっていない。
回復に向けた2通りの動きは国レベルで観られる訳ではない。UNIDO報告書では同じような傾向が各産業セクターの中でも観られることを示している。昨年第4四半期においてハイテクセクターはより速いペースで回復を遂げていた。ローテク産業の生産量は昨年第4四半期時点で1.8%のマイナス成長であった一方、中ハイテク、さらに上位に位置するハイテク産業では4.0%まで回復を遂げていた。下流分野、セクターに属する例えばコンピューター、電子機器、光学製品、電気機器、化学製品、さらに医薬品産業では、この半年間においてプラス成長を記録するに至っている。
昨年第4四半期に係るデータの公表を受け、2020年の全体像ならびに世界規模でのCOVID-19感染拡大の影響を年間通して検証することができる。そのデータから、2020年において推定4.1%のマイナス成長に陥るほど全世界における製造部門の生産量は大幅な減少に転じたことが明らかとなった。これは、2009年の世界金融危機以降に確認された最大の落ち込みとなるものである。しなしながら、たとえこれが深刻な状況であったとしても、アジア諸国における生産量の急速な回復と、先進国経済におけるマイナス影響が比較的限定されたものに止まっていることから、当初予想されていたほどには酷い状況にはないと捉えることができる。