このページをシェアする

第19回UNIDO総会でゲルト・ミュラー氏が新事務局長に就任

第19回UNIDO総会でゲルト・ミュラー氏が新事務局長に就任

2021.12.14

国連工業開発機関(UNIDO)は2021123日、ウィーン本部で第19回総会を開催しました。国連事務総長の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた「行動の10」の呼びかけに応じるように、世界各国はいま、新型コロナウイルスによる社会経済的影響からの復興に取り組んでいます。

本総会は、UNIDOが「包括的で持続可能な産業開発」(ISID)に向けて専門的知見を活かし、SDGs達成を目指す世界各国をどのように支援をしているかを示す機会となりました。

本総会は新型コロナウイルスの影響でハイブリット形式で行われ、加盟国の代表者や世界中のステークホルダーの多くがオンラインで参加しました。従来の展示会に代わってオンラインでUNIDOの活動を紹介するバーチャル展示会が実施されたほか、現地を訪れた参加者のために物理的な展示コーナー「より良い未来の構築」や写真展が設置されました。バーチャル展示会では、気候変動、産業セクターやアグリビジネスにおける開発、第4次産業革命と産業政策、UNIDOパートナーシップなど重要なトピックに焦点が当てられました。

オープニングセッションでは、リー・ヨン事務局長と加盟国の代表者たちがUNIDOの設立55周年を祝福。リー事務局長は「過去の年月を振り返り、また現在の状況を見据え、確固たる基盤を持ち、かつ機敏で革新的な組織であるUNIDOを新事務局長に引き継ぐことを嬉しく思います」と述べました。

8年間にわたってUNIDOの指揮をとったリー事務局長は、再任は一度であるUNIDOの規定に従い、この総会をもって事務局長を退任しました。代わって、元ドイツ経済協力・開発大臣であるゲルト・ミュラー氏が今後4年間、UNIDOの新事務局長として就任することが承認されました

ミュラー新事務局長は「多大な支援と新たな事務局長に選出してくれたことに感謝します」と述べました。また、「世界的な課題を解決するためには、世界各国の連携と先進国と開発途上国によるパートナーシップに基づく協力が不可欠です」と述べました。

5日間にわたった様々な会議や議論のテーマは、「より良い未来の構築」でした。

8回目となる包括的で持続可能な産業開発フォーラムでは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのイノベーション・公共価値経済学の教授で、世界各国の政策立案者のアドバイザーでもあるマリアナ・マッツカート氏による基調講演が行われました。

マッツカート氏は、「私たちには、水平的で分野横断的なパートナーシップを構築、調整、統治する上で主導的な役割を果たす政府が必要」とし、「気候変動やデジタルデバイド(情報通信技術を使える人とそうでない人に生じる格差)を考えるとき、それらの問題は個々では解決できません。将来的な産業政策と産業回復を目指すには、全てのセクターが力を合わせる必要があります」と述べました。

パートナーシップは、ドナー会議のテーマでもあり、加盟国の代表者とその開発パートナーたちがイノベーションによる影響の拡大について討議しました。

総会ではまた、UNIDOの主要な出版物「Industrial Development ReportIDR2022」が発表されました。本書は、一部の国が他の国よりも新型コロナウイルスの危機に際して上手く対応している理由を解説しており、産業化の未来に向けた教訓を探るものです。

IDR 2022の出版に際し、オックスフォード大学開発技術管理センターのシャオラン・フ―氏は「この新しいデジタル革命は、開発途上国とって新たな機会の入り口となります。そしてUNIDOは他の機関や組織と協力することによって、開発途上国における産業デジタル変革の加速を牽引できるでしょう」と述べました。

国連持続可能な開発ソリューション・ネットワークのプレジデントであるジェフリー・サックス氏は、各国はグリーン産業セクターへの移行を加速させ、エネルギーシステムを変革する必要があるとし、「私たちには化石燃料から再生可能エネルギーやゼロカーボン発電に移行するという課題がありますが、それを実現するためには、開発途上国が資金と技術に適切にアクセスできる仕組みが必要」と述べました。

経済を改革する推進力として、産業政策の重要性への認識が高まっていることもあり、サイドイベントでは、多国間で互いの政策を学ぶことや知識共有を目的とした国際的な産業政策フォーラム設立について議論されました

また、他にも「コロナ後の持続的な回復の推進力としての新しい投資」をテーマとして、開発途上国がどうすれば質の高い外国直接投資をより有効に活用し、投資に影響を与えられるのかについての対話を促進するサイドイベントも開かれました。

「第4次産業革命」は、持続可能で包括的な産業開発を可能にする上で重要な役割を担っています。UNIDOは加盟国と協力し、デジタルかつジェンダー平等に対応した持続可能な変革を主流化させ、デジタル機能を拡大するための戦略的枠組みを開発しています。これらは、「パンデミック後の世界はデジタル化される:開発途上国に対する第4次産業革命の影響」と題したサイドイベントで取り上げられました。

世界のコミュニティがコロナ後のより良い産業、経済、社会の再構築に努める中、女性に関連した課題に投資することは正しく、賢明なことでもあります。ジェンダー平等と女性のエンパワーメントはUNIDOの優先事項で、別のイベントでは、今後の活動における参考になるベストプラクティスやUNIDOのこれまでの活動の成果が取り上げられました。紹介された事例は、第2UNIDOジェンダー平等参画動員賞の受賞例を基にしたものです。

2021年は、国連総会で「持続可能な開発のため創造的な経済の国際年」と宣言され、別のサイドイベントでは、これに関連したUNIDOの活動が紹介されました。

19UNIDO総会は、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議 (COP26) からわずか数週間後に開催されました。 「包括的で持続可能な産業開発を通じた加盟国の気候変動影響の加速」と題したイベントでは、加盟国の著名な外部専門家と政策立案者が集まり、COP26でも議論された気候変動について話し合いました。

以上のように、本総会では、政府、学術界、民間企業、知識集約型機関の関係者が一堂に会し、すべての人にとってより良い未来を築くための道筋について議論されました。