モザンビークのインフラ事業に挑む──三井物産
2015.02.13
安倍首相訪問を追い風にビジネス環境が急速に整いつつあるモザンビーク
三井物産はモザンビークでLNG・石炭生産に加え鉄道、港湾の開発・運営に参入すると昨年12月9日に正式発表しました。日本・モザンビーク経済友好協会の設立にも尽力された三井物産株式会社のご担当者様にお話をうかがいました。
2014年12月9日三井物産株式会社は、総合資源会社である Vale S.A.がモザンビーク共和国で開発中のモアティーズ炭鉱、及びナカラ回廊鉄道・港湾インフラ事業に出資参画することで同社と合意したと発表しました。三井物産はモアティーズ炭鉱の95%権益を保有するVale社子会社の15%持分、及びインフラ事業を推進するVale社子会社の50%持分を取得します。三井物産の初期投融資額は本炭鉱が450百万米ドル(540億円)、本インフラ事業が313百万米ドル(376億円)です。詳細はニュースリリース参照
昨年12月に報道でも大きくとり上げられました貴社の「ナカラ鉄道・港湾インフラ事業」は、いつ頃から準備されてきたのでしょうか。
当社は、Valeが2004年に国際入札でモアティーズ炭鉱に参画して以来、Valeとは当社参画の可能性につき協議を実施していました。今回のDealに関する交渉が本格的に進んだのは、Valeが一昨年11月末にVale Dayにて「炭鉱の15-25%、インフラの50%の売却可能性」を発表して以降です。更に昨年1月の安倍首相のモザンビーク訪問・同国に対する支援強化表明も、カントリーリスクに対する抑止力強化に繋がり、大きな追い風となりました。最終的に交渉が妥結し、契約を締結したのは適時開示を行った昨年12月9日です。
報道によりますとブラジルでの貴社の経験がいかされたとのことですが、ビジネスモデルについて改めてお聞かせいただけますか。
競争力のある優良炭鉱の資源開発に加えて安定的な収益が見込める鉄道・港湾インフラ事業を一体的に行うビジネスモデルです。鉄道・港湾インフラ事業では石炭輸送のみならず、一般貨物及び旅客も輸送し、港湾では一般貨物ターミナルの整備・運営にも関与するものです。
日本企業の視点で、モザンビークの最も魅力的な部分はどこでしょうか。
日本とモザンビークの関係は16世紀までさかのぼり、織田信長に仕え本能寺でも戦った弥助がモザンビーク人であったという話もあり、日本人が出会った最初のアフリカ出身者はモザンビークの方だったのかもしれません。天正遣欧少年使節が欧州からの帰路にモザンビークに滞在したこと、或いは太平洋戦争開戦後に日本と米国、英国の外交官等の交換がモザンビークで行われる等、歴史的な関係についてご存じの方もいらっしゃると思います。また独立後1992年まで続いた内戦終結後の1993年からの国連平和維持活動や開発援助でも日本の功績は評価されています。
一般的にモザンビーク人は比較的温厚で日本人にも似ていると言われ、研修等で来日した関係者を中心に、親日家も多い様です。モザンビークでは旧宗主国の影響でポルトガル語が使用されており、日本語になったポルトガル語としてパン、タバコ、コップ等の言葉が使われています。またモザンビークでは車は左側走行で右ハンドル車が基本です。街中を走っている車は殆どが日本の中古車で、日本の温泉旅館や幼稚園の名前やロゴが消されずに走っているバス等もあり、親近感がわきます。
料理についても、広い海岸線を有していることから、イワシの塩焼き等の魚介類や甲殻類を堪能することができますので、日本人にはなじみ深い国だと思います。
日本とモザンビークとの二カ国投資協定も2014年8月に発効し、世界銀行のDoing Businessの2015年ランキングでは189カ国中127位と前年の142位から上昇する等、ビジネス環境が改善しており、更なる民間企業の投資の活性化が期待されます。
日本企業にとってモザンビークという国の戦略的な重要性をどのように評価されますか?
地政学的な戦略性だと思います。鉱物資源・エネルギーを輸入に頼らなくてはならない日本にとり、輸入国・地域の分散化は必須であり、日本企業が権益を持つアフリカの東海岸に位置するモザンビークからLNGを継続的に輸入することは、日本のエネルギー政策上も、有意義なことと考えます。
また、モザンビークには豊富な資源が存在するものの、水道・電気・道路・鉄道・港湾等のインフラが甚だ脆弱であり、日本企業としてモザンビークの発展に貢献できる分野が数多くあることです。現在、同国は7%台という高い経済成長率で推移しており、更に8%台に上昇することが見込まれています。今後インフラや産業が整備されることで、周辺内陸国の玄関国としても大いに期待され、日本とモザンビークがともに成長するチャンスかと思います。
日本モザンビーク経済友好協会を設立されたとのことですが、どのような活動を予定されていますか。
2013 年6月に開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD V)において民間セクター主導による成長の重要性について言及されると共に、会期中には日本とサブサハラ・アフリカとの間で初となる二国間投資協定が署名され、投資の促進が期待されています。また2014年1月に安倍総理が日本の総理大臣として初めてモザンビークを訪問された際には約30の日本企業等の代表者も参加され、モザンビーク政府との間で成長の推進と経済発展において民間部門が不可欠な役割を果たすことが確認され、投資フォーラムも開催されました。総理の訪問を受け2014年7月にはモザンビークにおけるビジネス環境の整備及び更なる投資促進・円滑化に向けたビジネス関係の強化の為に官民合同会議が開催されました。
この様に日本企業によるモザンビークでのビジネス環境が整いつつある中、マラテ駐日モザンビーク共和国特命全権大使閣下より、日本・モザンビーク経済友好協会設立について呼びかけがあり、弊社にも設立への協力依頼がありました。弊社としてもモザンビークに事務所を構え、北部でのLNG事業開発等にも携わっていることもあり、友好協会の設立をお手伝いすることになりました。
日本とモザンビークの交流は他国と比べると未だ一部に限られており、民間レベルの横断的な取り組みを通じ、他機関・団体とも連携し、相互理解、友好関係を深化させ、二国間の発展・繁栄に貢献するという趣旨に基づき、モザンビークの独立40周年を迎える節目の年でもある、2015年1月に友好協会は設立されました。
どのような業種業態の日本企業がモザンビークに進出すれば成功するとお考えになりますか?
2015年1月に就任されたNyusi大統領は就任式で石炭、ガス、重鉱物等の資源を活用した経済成長に加え、雇用を創出する可能性の高い農業、漁業、輸送、サービス、観光関連産業への期待を示しました。更に交通インフラ整備、教育・人材育成、保健・衛生等の重要性に就いて言及しています。
これらの幅広い分野における日本企業の経験、知見、強みを生かし、長期的な視点に立ってモザンビークの良き理解者となり、現地企業と連携し信頼関係を構築し、パートナーとして認められることが大切かと思います。
(写真提供:三井物産株式会社)