ラオス ― タイ・プラス・ワンの切り札
2015.03.30
ラオスは「インドシナの中心」とも呼ばれ、大メコン圏を構成するタイ、中国、ベトナム、カンボジア、ミャンマーの5カ国全てと国境を接しています。
中国・雲南省とタイのバンコクを南北に結ぶ南北経済回廊と、ミャンマーとベトナムのダナンを結ぶ東西経済回廊が通っており、ラオスは大メコン圏の東西南北交通の要衝にあります。
メコン川に沿って国があり、国土の85%がメコン川流域に含まれています。4つのタイ・ラオス友好橋が大河によって東西に隔てられた半島内の陸路を繋いでいます。
タイとラオスは言語的に近く、国境を越えた交流や通商は日常的に盛んに行われています。
特に近年は「タイ・プラス・ワン」戦略によって注目が集まっており、政治情勢や自然災害のリスクを考慮して、タイの生産拠点のバックアップや分業体制の一翼を担う拠点として、日系企業の進出が加速しています。人件費がタイよりも安く、言葉が通じるためタイ人のスタッフがラオス人を指導できることが大きなアドバンテージとなっています。
(図:アジア開発銀行)
メコン川の豊富な水量を活かし、ラオスには水力発電所が21ヶ所あります。国内需要の3倍の発電容量があるため、電力が不足しがちなタイ、ベトナム等の周辺国へ輸出しています。政府は戦略的に電力開発を進め、大メコン圏の中での電力供給地としての地位を確立し、さらには電力集約的な産業の誘致などに繋げていく考えです。(日経新聞等)
稲作に適した気候で食料自給率は100%を超えており、食文化は豊かです。熱帯特有の緑豊かな美しい自然に加え、「ルアンパバーンの町」と「チャンパサック県の文化的景観にあるワット・プーと関連古代遺産群」が世界文化遺産に指定されており、仏教寺院も多いことから、今後は観光産業の成長も期待されています。
※大メコン圏
タイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、ラオス、中国・雲南省などのメコン川流域6カ国で構成され、総面積約260万平方キロメートル、人口約3.3億人。日本政府やアジア開発銀行が開発を支援している。
※東西経済回廊
大メコン圏の統合を目的に西はミャンマーのモウラミャインから東はベトナムのダナンまでインドシナ半島を東西に横断して整備されている全長1,450kmの道路。ラオスでは主要都市サワンナケートを通るほか、サワン・セノなどの経済特区がこの道路に沿って設けられている。
(イメージ写真:yeowatzup, Khanh Hmoong, David McKelvey)
国名 :ラオス人民民主共和国(Lao PDR)
首都 :ビエンチャン(Vientiane) 人口は79.7万人(2012年ラオス統計局推計)
人口 :669万人(2014年ラオス統計局推計)
年齢 :平均年齢は21.6歳
面積 :約24万平方km(日本の本州に相当)
気候 :熱帯モンスーン気候(6~10月は雨季、11~5月は乾季)
民族 :ラオ族(60%)他、計49民族
言語 :ラオス語(タイ北部とはほぼ同じ、タイ標準語とも方言程度の違い)
宗教 :仏教(3分の2)、アニミズムなど。
教育 :小学校5年間(義務教育)、中学校4年間、高校3年間、国立大学は4つ。
通貨 :キープ(kip)
略史 :14世紀 1353年 ランサーン王国成立(「百万の象」の意味)都はルアンパバーン
16世紀 ビエンチャンに遷都(ビルマの圧力)
18世紀 ルアンパバーン、ビエンチャン、チャンパサックの3王国に分裂
19世紀 フランス植民地となり、インドシナ連邦に編入される
1949年 ランサーン王国がフランス連合の枠内で独立、1953年完全独立。
王国政府と完全独立を目指すパテートラオ臨時政府が対立し内戦に発展
1975年 パテートラオ軍のビエンチャン進駐
ラオス人民民主共和国成立。ランサーン王国の消滅
1986年 新思想(チンタナカーンマイ)政策導入、市場経済化始まる
1997年 ASEAN加盟
2013年 WTO加盟
政治 :人民民主共和制。ラオス人民革命党の一党独裁。同党はベトナム共産党と同じルーツを持ち、
ベトナムとは特別な関係にある。近年は中国の影響力が強まっている。
元首はチュンマリー・サイニャソーン国家主席(ラオス人民革命党書記長)
議会は一院制で首相はトンシン・タンマヴォン(党政治局員)
経済 :1人当たりGDP1,628ドル、実質GDP成長率 8.0%(2013年 ラオス統計局)
サービス業(GDPの約37%)農業(約26%)工業(約31%)(2012年,ラオス統計局)
名目GDPは84兆4750億キープ(約100億米ドル)、消費者物価上昇率4.31%(2014年,ラオス中央銀行)
輸出 約23億ドル、輸入 約30億ドル(2013年,ラオス中央銀行)
詳細は国際協力銀行「ラオスの投資環境」(2014年7月発行)をご参照下さい。