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アセアンの経済統合と製造プロセスの分業化に伴う汚染リスク

アセアンの経済統合と製造プロセスの分業化に伴う汚染リスク

2016.04.06

IMG_2074s法政大学 人間環境学部 教授 藤倉 良

私はウイーン出張の機会をとらえ、UNIDO本部を訪問することができました。UNIDOは私が専攻している環境分野でも関連技術の移転などで多大な貢献をしていて、かねてからスタッフの方々と意見交換をしたいと考えていました。

2016年3月21日、担当のセリックさんに1時間ほどのセミナーを開催して頂き、11名の参加を得て、私の研究室で行った研究成果のプレゼンテーションをさせて頂きました。タイトルは「アセアンの経済統合と製造プロセスの分業化に伴う汚染リスク」です。

アセアンは2015年12月31日に域内の関税を撤廃して自由貿易圏(AFTA)を形成しました。一方で、タイは人件費の高騰に伴って、製造工程の一部をカンボジアやミャンマーなどの周辺諸国に移しつつあります。タイは環境規制の制度は整備できていますが、周辺諸国では規制基準も未設定であり、公害対策には不安が残ります。

これらの諸国で建設された工業団地を調査すると、日本の援助や日本企業が造成に関わったところでは共同排水処理施設が建設されていますが、そうでないところには設置がなく、団地内の各工場に処理が任されているのが現状です。こうした共同処理施設のない団地は賃借料が安いため、より多くの工場が誘致される可能性があります。

現状では、周辺諸国に移転しているのは繊維業などの軽工業が多いのですが、この地域のインフラが整備されるに伴って、環境負荷の大きな工場が移転し、公害が発生するリスクが高まると考えられます。私のプレゼンテーションに対して、出席していたUNIDOのみなさんから、域内の貿易に関するマクロデータなどを利用して公害発生を予測するモデル計算を行なえないかなど、今後の研究の実施に向けて有用な示唆を頂きました。

IMG_2075今回のUNIDO訪問にあたり、本部との紹介の労をとってくださった東京事務所のゲレゲンさんとセミナーをアレンジしてくださったセリックさんに感謝申し上げます。

プレゼンテーション資料