シリア難民の悲願が実現
2018.06.25
UNIDOはイラクのクルド人地域に居住するシリア難民に向けて、食糧及び経済の保障を促進するための研修を実施しています。ダラシャクラン難民キャンプは食糧生産に関する研修が行われている地域の一つで、農家から小規模生産者、中小企業に至るまでの様々な人々が衛生と安全について学び、自分達の製品を市場に提供するためのノウハウを習得しています。
チャールズ・アーサー
2018年3月20日
「シリア人はお菓子作りが上手いことで有名なんだ。」とモハマド・サイードさんは言います。彼と義理の息子であるエマド・モハマドさんは、イラク北部の都市エルビルの近くにあるダラシャクラン・キャンプに住んでいます。彼らは手作りのケーキと、ペイストリー生地の上に刻んだナッツを載せて蜂蜜をかけた「バクラヴァ」と呼ばれる菓子を売って生計を立てています。
サイードさんとモハマドさんはダラシャクラン難民キャンプにある菓子店舗の一つである「Sima’s Sweets」を経営しています。Sima’s Sweetsは現在1日あたり10~15kgの菓子を難民キャンプの住民に販売していますが、85万人の人口を有するエルビルで商品を販売することを望んでいます。エルビルでは既にシリア人経営の菓子店舗が多数あり、成功しているからです。
国連工業開発機関(UNIDO)がオーストリア・日本の両国政府から資金提供を受けているプロジェクトによって、彼らは事業拡大の悲願実現にまた一歩近づきました。
ダラシャクラン難民キャンプは2013年に開設され、現在では主にシリア北東部の町カーミシュリーから来た約11,000人のシリア難民の居住地となっています。シリア内戦が8年目に突入したことから、ダラシャクラン難民キャンプは永続的な居住地の様相を帯びてきています。レンガ製住宅の建設が国連が提供したテントに取って代わり、多くの居住者が収入を得る方法を見つけています。400を越える店舗が企業家精神のある住民によって経営され、ウェディングドレスや肌着類から、持ち帰りの食事やアイスクリームに至るまでを販売しています。
「ここの難民は皆働きたいんだ。」とキャンプマネージャーのアシュナ・ガルディさんは言います。「世界中の支援者から提供される資金が減るほど、キャンプの居住者自身が本当に必要としているものを支援することが、より重要になっていく。」
UNIDOはイラクのクルド人地域に居住するシリア難民に向けて、食糧及び経済の保障を促進するための研修を実施しています。ダラシャクラン難民キャンプは食糧生産に関する研修が行われている地域の一つで、農家から小規模生産者、中小企業に至るまでの様々な人々が衛生と安全について学び、自分達の製品を市場に提供するためのノウハウを習得しています。
この研修はSima’s Sweetsがビジネスを発展させるための助けとなってきました。
「食品で商売をするには、ビジネススキルに加えて、健康と安全の基準を守ることが重要だと、研修で気づかされた。」とモハメドは言います。また、研修によってSima’s Sweetsは商品の包装を改良し、キャンプから車で45分のエルビルまで配達するという新しいビジネスプランを実施しています。
経営スキルやノウハウは事業拡大のために重要ですが、サイードさんとモハメドさんは製造の基本についても気を配らねばなりません。そこでUNIDOはSima’s Sweetsを含む難民キャンプ内の菓子店のリノベーションを支援し、インフラや設備を提供して事業の成長や持続可能な未来の構築につなげています。