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イベントレポート:産業政策と回復への道のり ※録画映像視聴可能

イベントレポート:産業政策と回復への道のり ※録画映像視聴可能

2020.12.14

※録画映像はこちらよりご視聴頂けます。

2020年11月16日、ウィーン-新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)は、経済発展に大きな課題を課していますが、それと共に「よりよい復興(ビルド・バック・ベター)」のための新たな機会についても明らかにする可能性があります。再新の産業政策は、危機を克服し、各国を経済発展の道のりに戻すための機会を形成する上で重要な役割を果たすことができます。

ウェビナーシリーズ(第2弾)「パンデミック後の世界における産業化の未来」の冒頭で国連工業開発機関(UNIDO)の李勇事務局長は、「産業セクターの強化は回復の鍵となります。この重要な目標を達成するために、産業政策は政府による対応の中核にすべきできす。」と述べました。

同様の見解は、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の副事務局長であるマリオ・シモリ(Mario Cimoli)氏によっても共有され、パンデミック後の回復は変革的かつ、各国は経済成長だけでなく、成長の方向についても主な焦点を当てるべきだと強調しました。また、「私たちに成長は必要ですが、成長の質も重要です。平等は産業政策、成長、発展の前提条件です。」ともシモリ氏は述べていました。

ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)のイノベーションと公共価値の経済学の教授であり、UCLイノベーションと公共目的研究所の創設ディレクターであるマリアナ・マズカート(Mariana Mazzucato)氏は、イノベーション主導の包摂的で持続可能な成長に関する政策顧問としての自身の経験を活かし、脱炭素化、情報格差、また保健システムに関するあらゆる課題など、パンデミックによって加速された世界的な課題に効果的に対応するための官民パートナーシップの役割について議論しました。

マズカート氏は、ベトナムやインドのケララ州などの発展途上国の例を上げ、「COVID-19を通して、私たちは州の能力が必要であることに気づきました。」と述べ、より包摂的で持続可能な回復のために州の能力向上に投資する重要性を強調しました。

マズカート氏はまた、「SDGsは複雑な目標です。私たちは、産業調達などの日常的な政府活動についてもSDGに焦点を当てるよう変革する必要があります。」と述べ、SDGsを政府の行動を方向付けるミッションに変えることにより、産業戦略の中心に置く必要性についても説明しました。このような成果重視の産業戦略を追求するには、政策手段を共に再設計するため、セクターとステークホルダーの全体で再新の協力が必要です。この点についてマズカート氏は、目標に焦点を合わせた条件を回復法案に追加するという変革の目的と、これが持続可能な解決策とどのようにより社会的成果に繋がるかを強調しました。

復興を支援する上で重要となる政府の役割については、北京大学国立開発学校の教授兼学部長であるジャスティン・リン(Justin Lin)氏によっても強調されました。リン氏は、リン氏の提唱する新しい構造経済学のアプローチに基づき、構造変化を維持し、より回復力と競争力のある経済を構築することを目的に、「産業セクターを開発するためには手助けが必要です。政府が手助けの役割を果たしていない場合、自発的な構造変化は起こり得ません。」と述べ、産業政策の必要性について議論しました。

またリン氏は、COVID-19のパンデミックによって引き起こされた構造変化における主な課題について議論した際、パンデミックを要因とする不況により、開発途上国が構造変化のための産業政策に割り当てる資源が少なくなることを強調しました。迅速で包摂的かつ持続可能な回復のために、「私たちクイック・ウィン(Quick-Win)を目指す必要があります。 これは、既存企業が貿易の信用、免税、債務返済の延期によって生産活動に戻り、雇用、輸出、収益を提供できるよう支援することを意味しています」と述べました。そして、「政府は産業政策の活用により優先産業を特定し、持続可能な産業化を達成するための投資を促進することができます」と結論付けました。

すべてのパネリストは、産業政策がCOVID-19による危機からの回復への道を形成し、「よりよい復興(ビルド・バック・ベター)」という新たな役割を担うことに賛同しました。回復法案は、より包摂的で持続可能な産業開発に向けた変革的な回復を加速する方法によって形成され、その加速は、第4次産業革命の高度なデジタル技術の産業応用によって支援されるべきです。回復力のある産業開発を達成するための取り組みを整えることの重要性は、パンデミックが産業化の将来に与える影響に焦点を当てたUNIDOの主力レポート「産業開発レポート2022」の中核となります。

※本セミナーの録画映像はこちらよりご覧いただけます。