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イベントレポート:UNIDO-ICEF共催イベント「世界のカーボンニュートラルを目指して~開発途上国・新興国との連携」を開催

イベントレポート:UNIDO-ICEF共催イベント「世界のカーボンニュートラルを目指して~開発途上国・新興国との連携」を開催

国連工業開発機関(UNIDO)は2021年10月7日、第8回Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)年次総会において、UNIDO-ICEF共催でサイドイベント「世界のカーボンニュートラルを目指して~開発途上国・新興国との連携」オンラインにて開催しました。本イベントでは、先進国及び開発途上国の政府・産業界・学術界等の関係者が一堂に会して、全地球レベルでのカーボンニュートラル達成に関する課題を共有し、解決への方向性について建設的な議論を行いました。

経済産業省の岸本道弘・産業技術環境政策統括調整官は来賓挨拶にて、近年世界各地で発生している大規模な自然災害に触れ、パリ協定の目標であるグローバルなカーボンニュートラルを達成するためには「PIE」:1)Pathway(経路)、2)Innovation(技術革新)、3)Engagement(先進国の途上国・新興国支援)が重要であると述べました。

続いて、東京大学の沖大幹教授は「カーボンニュートラル達成に向けて」と題した基調講演において、途上国・新興国からの温室効果ガス排出量が年々増加していることを指摘した上で、全世界人口の約1割に当たる電力へのアクセスを持たない人々の存在にも言及し、カーボンニュートラル投資は環境保護のみならず、途上国・新興国でのエネルギー安全保障にも貢献することを強調し、先進国と途上国・新興国間の協力体制構築の必要性を訴えました。

安永裕幸UNIDO東京事務所長のモデレートによるパネルディスカッションでは、パネリスト6名が参加し、まずそれぞれが各国や国際機関におけるカーボンニュートラル達成に向けての取り組みを発表し、その後さらに実現に向けた具体的な議論を交わしました。

初めに、南アフリカ大統領気候変動調整委員会副議長でICEF運営委員も務めるバリー・ムーサ氏は、「南アフリカ共和国の低炭素社会実現に向けての状況」について講演し、南アフリカ国内、特に地方における石炭火力発電関連産業に依存した地域経済の変換が大きな課題であると述べ、カーボンニュートラル達成には、必要とする資金調達を可能にする途上国と先進国間の協定が必要であると訴えました。

中国・米国グリーンファンド会長シュウ・リン氏は、「中国の脱炭素化への道筋」について講演し、国内の二酸化炭素排出の約50%を占めるエネルギー部門、及び、全体の75%を排出する都市部の脱炭素化がカーボンニュートラル達成の鍵を握るとし、課題はあるものの40年以内の目標達成は可能であると強調しました。

ドイツ産業連盟理事ウォルフガング・ニーダーマルク氏は、「エネルギー集約産業における機会と挑戦」と題し、ドイツ社会とバリューチェーンの基礎を成す鉄鋼や金属といった7つのエネルギー集約産業に焦点を当て、産業・社会全体の保護と脱炭素化の両立の重要性を説きました。

モロッコ王国持続可能エネルギー庁(MASEN)R&D産業統合部長ヒッシャム・ブーゼクリ氏は、「モロッコの再生可能エネルギー技術・ビジネスにおける課題と機会」について講演し、モロッコ国内の再生可能エネルギー事業の取り組みを紹介するとともに、パートナーシップや地域ネットワークを中心とした、北アフリカ地域全体のカーボンニュートラル達成にも言及しました。

気候技術センター・ネットワーク(CTCN)アジア大洋州部長クララ・ランデイロ氏は、「技術支援・能力開発に向けた国際協力」と題した講演を行い、国際機関による、途上国の気候変動に関するSDGs達成のための具体的な支援の内容を紹介しました。

国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)、ゼロエミッション国際共同研究センター(GZR)センター長の吉野彰氏、は「グローバルカーボンニュートラル実現に向けてのAISTGZRの課題」について講演し、カーボンニュートラルの達成に向けての同研究所の取り組みを太陽光発電や合成燃料の事例を用いて紹介しました。

プレゼンテーション後の議論では、以下の4点が総括として強調されました。

1)先進国と開発途上国/新興国の協調・協力がカーボンニュートラルの達成には不可欠である。
2)低炭素技術の開発・応用は、人類にとって大きな課題であるが、同時に大きなビジネスチャンスでもある。
3)ただし、カーボンニュートラルを達成するのに必要な低炭素技術の開発・応用は容易ではなく、費用と時間と叡智が必要である。
  また、研究開発成果を社会実装するためには、巨大な投資を誘引し、社会そのものを変革することが重要である。
4)これらに関する国際的なコンセンサスと推進の枠組みを作ることが、今、求められている。

閉会挨拶では、UNIDO国吉浩・事務次長が経済成長や産業開発、そして安定したエネルギー供給体制の構築といった複数の課題を同時に解決していくことがカーボンニュートラル達成への道筋であることを再度強調し、「UNIDOはICEFのパートナーとして、政府、産業界、学術界、市民社会とともに、今後も美しい地球の創出に貢献していく」と述べました。

概 要

日 時: 2021年10月7日(木)15:0017:00(日本時間)
形 式: オンライン
主 催: UNIDO、ICEF
参加費: 無料
言 語: 英語(※日英同時通訳)

プログラム

来賓挨拶      
          経済産業省産業技術環境局 産業技術環境政策統括調整官 岸本 道弘

基調講演
          
前・国連大学上級副学長/東京大学生産技術研究所教授 沖 大幹

パネルディスカッション
        モデレーター:          
          UNIDO東京投資・技術移転促進事務所 所長 安永 裕幸

        パネリスト:
          南アフリカ/ICEF運営委員(元南アフリカ共和国環境大臣) バリー・ムーサ
          
中国/中国・米国グリーンファンド会長 シュウ・リン
          ドイツ/ドイツ産業連盟理事 ウォルフガング・ニーダーマルク
          モロッコ/モロッコ王国持続可能エネルギー庁(MASEN)R&D産業統合部長 ヒッシャム・ブーゼクリ
          国際機関/気候技術センター・ネットワーク(CTCN)アジア大洋州部長 クララ・ランデイロ
          日本/産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センター長 吉野 彰

閉会挨拶
          UNIDO事務次長 国吉 浩