日本企業、途上国への技術移転をリモートでサポート/新型コロナウイルス等感染症対策のSTePP技術検証プロジェクト
2021.09.30
新型コロナウイルスの世界的流行によって現地での活動が制限される中、日本企業は、アフリカやアジアの開発途上国に対する技術移転を遠隔でサポートしています。
この取り組みは日本の外務省による資金協力を受けて、UNIDO東京事務所がアフリカとアジアの12か国で実施するサステナブル技術普及プラットフォーム(STePP)の技術検証プロジェクトで、新型コロナウイルスなど感染症対策の技術を移転しています。
例えば、株式会社キンセイ産業はケニアに医療廃棄物焼却炉を設置するため、日本から技術者を現地に派遣する予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で渡航が禁止されました。しかし同社は制限が緩和されるのを待つのではなく、オンラインツールを活用して、日本から11,000km以上離れたケニアのエンジニアに遠隔で技術的な指導を行いました。
ナイロビのムトゥイニ病院での医療廃棄物焼却炉の設置プロジェクトについて、キンセイ産業の矢野公一氏は、「2台のカメラに加え、6つの異なるオンラインアプリケーションを同時に使用し、現地のエンジニアに指示を出しました。オンラインなので全て口頭で指示しなければならず、初めは戸惑いました。しかし、現地コーディネーターの協力を得て、予定通りに機器の試運転を成功させることができました」と述べています。
他にも、インドでの事業を既に成功させている丸昌産業株式会社はケニア、ネパール、モンゴルにおいても感染症対策技術であるインバイロシールドM5の実証を行っています。インバイロシールドとは、感染症の蔓延を防ぐために天井、壁、家具、その他の機器に塗布できる光触媒コーティング液です。
新型コロナウイルスの感染拡大中は病院へのアクセスが制限されていたため、同社は、コーティング技術者訓練のためのビデオを現地語で作成しました。
同社の吉川貴之氏は、「今回作成したトレーニングビデオは、技術者がコーティング手順を視覚化して理解するのに役立ちました。トレーニング中、技術者は必要に応じてビデオを停止、または巻き戻すこともでき、何度も練習することができます。私たち日本の技術者もオンライン会議アプリを通じて指示を伝えることで、現地技術者をサポートしました」と語っています。
オンラインツールが遠隔トレーニングの実施と試運転をする上で、重要な役割を果たしたことは間違いありませんが、日本企業の問題解決への強い熱意や多大な努力も忘れてはなりません。
キンセイ産業の矢野氏は「ネットワークの問題によってプロジェクトの実施が妨げられないよう、ケニアで利用できる全てのオンラインプラットフォームを事前にテストし、不安定な接続環境でも指導ができるように入念に準備しました。。現地とは 6時間の時差があり、共同作業は容易ではありませんでしたが、私たちの機器がムトゥイニ病院の医療従事者の役に立ってると聞いて大変嬉しく思います」と述べています。
キンセイ産業と丸昌産業の両社はコロナ禍において、オンラインでプロジェクトを進めることは必要な対応であったと考えており、この経験は両社に新しい視座を与えました。その上で、両社の担当者は直接対話することの良さも改めて痛感しました。
UNIDO東京事務所はSTePPを運営し、エネルギー関連技術、環境関連技術、アグリビジネス関連技術、保健衛生関連技術に焦点を当て、これらに関する日本の技術や関連する情報を提供しています。STePPの目的は、発展途上国と新興国において包括的かつ持続可能な工業化に貢献することです。現在、103社が120の技術でSTePPに登録されており、そのうち東京事務所が独自に選定した13社が本記事で紹介したプロジェクトを含む新型コロナウイルスなど感染症対策の技術移転に取り組んでいます。
本プロジェクトの概要につきましては、以下をご参照ください。
UNIDO and Japan to tackle the impact of the COVID-19 pandemic
Japanese technology to fight COVID-19 in Africa and Asia
Japanese technologies help Africa and Asia fight COVID-19
アフリカやアジアのコロナウイルス等感染症対策に日本企業の技術活用へ 国連工業開発機関(UNIDO)が13社を採択
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